「国内における細胞性食品のリスク評価及び管理方針に関する考え方」を作成。
消費者庁へ情報提供し、今後は意見交換の輪を広げることを目指します

国内におけるリスク評価及び管理方針に関する考え方を作成・提供いたしました。
2025年4月、一般社団法人細胞農業研究機構(JACA)は、安全性やレギュラトリ―サイエンスの専門家20名以上を招集し「国内における細胞性食品のリスク評価及び管理方針に関する考え方」(以下、専門家案)を作成しました。また、消費者庁食品衛生基準審査課新開発食品保健対策室(以下、新開発食品保健対策室)への情報提供の一環として専門家案を新開発食品保健対策室へ提出いたしました。
社会課題を目指す技術の開発促進は重要ですが、その技術がいつ世界的に普及しても対応できるように社会的な準備を進めることも同様に重要です。そのためには、技術を正しく理解し、独立した立場からリスク評価及び管理の検討に協力が可能な、安全性やレギュラトリ―サイエンスの専門家を増やすことが必要です。また、同専門家と開発者の間での情報共有を支援し、将来的には細胞性食品分野において、食品の安全性評価を研究開発プロセスに統合し、「設計による安全性」を確保する環境づくりを目指すことが重要です。
専門家案の目的と役割
JACAでは、専門家案を通じて、製造販売業者が自社で製造または輸入した細胞性食品のリスク評価や管理方針を検討する際に参考となる考え方を整理しました。また、現在、食品衛生基準審議会新開発食品調査部会におけるガイドライン案等の対応検討に対しても、その議論の一助となることを期待し、新開発食品保健対策室への情報提供を行いました。さらに、専門家案の作成を通じ、様々な分野の専門家への情報提供や意見交換を行い、細胞性食品に関する共通の専門的知見の形成に貢献することを目指しました。
作成の流れ
- 2024年6月に『細胞性食肉及び魚介類の安全性及び品質管理にかかる国際動向』レポートを発表(英語版の入手はこちら)
- 当該レポートをもとに、製造販売業者との意見交換を経て、国内向けのリスク評価・管理方針の素案(「業界案」)を作成
- 「業界案」をもとに、安全性やレギュラトリ―サイエンスの専門家との意見交換を経て、「専門家案」を作成
参加した専門家とコンサルタント
専門家案の作成には、食品衛生学、薬理学、毒性学、獣医学、再生・細胞医療、栄養学、リスクコミュニケーションなどに精通した、国内12名・1団体、海外10名の独立した専門家にご協力いただきました。
また、国内外の細胞医薬、毒性学、新規食品、技術情報を専門としたコンサルタント5名が、意見集約やドラフト作成をサポートしました。
今後の予定
5月以降、専門家案に対する意見収集を進め、開発企業や食品安全関係者などと広く意見交換を進めたいと考えます。最初の取り組みとして、農林水産省フードテック官民協議会の細胞農業ワーキングチーム(WT)にて第一回の説明会を5月15日に実施いたしました。第二回は5月19日を予定しております。
本案にご意見ご関心のある方は、JACAまでご連絡ください。
フードテック官民協議会細胞農業WTの取組や活動にご関心にある方は、農林水産省フードテック官民協議会にご入会の上、細胞農業WTにご参加ください。
最後に
本専門家案の作成にあたり、ご協力いただいた国内外のレギュラトリーサイエンス分野の専門家の皆様、及びコンサルタントの皆様に心より感謝申し上げます。
今後も、引き続き透明性と科学的妥当性を重視しながら、細胞性食品の議論推進を目指してまいります。
専門家案作成にあたっては、以下の方々からご協力をいただきました。
国内(五十音順)
• 浅井鉄夫(岐阜大学 大学院連合獣医学研究科 教授)
• 五十君靜信(学校法人 東京農業大学食品安全研究センター センター長)
• 石見佳子(東京農業大学総合研究所)
• 大島千尋((国研)水産研究・教育機構 水産技術研究所)
• 小関良宏(東京農工大学 工学研究院 名誉教授)
• 小野敦(岡山大学 教授)
• 片倉啓雄(関西大学 化学生命工学部)
• 近藤一成(昭和女子大学)
• 清水達也(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 所長・教授)
• 千葉修一(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
• 三森国敏(東京農工大学 農学研究院 名誉教授)
• 山﨑毅(NPO法人 食の安全と安心を科学する会 SFSS 理事長)
• 団体: 大阪大学大学院工学研究科テクノアリーナ細胞製造コトづくり拠点
海外(アルファベット順)
• Alex Ward, Ph.D.(Arta Bioanalytics)
• Andreas Lopata, Ph.D.(Professor, James Cook University & The National Centre for Food Allergy Research (CFAR))
• Andy Hee-Meng Tan, Ph.D.(Bioprocessing Technology Institute, Agency for Science, Technology and Research, Singapore)
• Dean Joel Powell, Ph.D.(The Good Food Institute Asia Pacific)
• Hans Verhagen, Ph.D.(Professor, Food Safety & Nutrition Consultancy)
• Ho Yin Ying, Ph.D.(Bioprocessing Technology Institute, Agency for Science, Technology and Research, Singapore)
• Mark Lalli, Ph.D.
• Reza Ovissipour, Ph.D.(Assistant Professor, Department of Food Science and Technology, Texas A&M University)
• Richard E. Goodman, Ph.D.(Professor Emeritus, University of Nebraska-Lincoln)
• William Chen, Ph.D.(Professor, Singapore Future Ready Food Safety Hub, Nanyang Technological University Singapore)
専門家からの意見のとりまとめ、原稿作成等の事務局業務の遂行担当者は下記となります。
国内(五十音順)
• 後藤秀俊(Ramboll Japan 株式会社 Health Science カントリーディレクター)
• 高木基樹(株式会社ジェーサーバイオ 代表取締役)
• 山中久美子(株式会社テクノプロ/テクノプロ・R&D 社)
• 吉富愛望アビガイル(一般社団法人細胞農業研究機構)
海外(アルファベット順)
• Jo Anne Shatkin, Ph.D.(Vireo Advisors, LLC)
• Kimberly Ong, Ph.D.(Vireo Advisors, LLC)
備考
• 本取り組みの一部はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けております。
• 農林水産省フードテック官民協議会の連絡先はこちら:https://food-tech.maff.go.jp/
• 氏名及び所属等の表記は、各専門家(団体)の意向に基づいて記載しております。