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【レポート】食の未来を考え遊ぼう〜細胞性食品のホントと不確実性〜 創造性ゼミ特別講座

9月1・15・29日の3日間あらゆるバックグラウンドの生徒さんにお迎えして、細胞農業産業創出を国内外の動向を見据えて特別講座の講師として当機構の吉富代表理事が登壇しました。

当日は、当機構の活動理念は3つの柱からご紹介

  1. 公益(産業や消費者)に貢献する仕組みの検討と実装
  2. 技術の実現可能性や国際動向等に関する情報の収集及び誠実な発信
  3. 日本の国際的な議論への参画促進

細胞農業技術を必要とした世界で抱える環境・社会課題、投資状況、参入企業動向、そして政府の取り組み状況と、多岐領域に渡った講座内容となりました。

3回シリーズで行われた講義内容は、細胞農業技術が必要とされている時代背景、細胞農業の生産方法とその課題、国内外の投資・ルール形成・消費者動向について状況説明を行いました。

動物由来資源が現在抱える課題の例

細胞性食肉の生産工程

講座の後半では、細胞性食肉の市場規模と価格予測、そして、当機構の重要な役割であるルール形成に触れ、日本として細胞農業に対してどのように向き合うべきかについて話しました。他国事例として米国を取り上げ、日本が乗り越えるべき課題を紹介し、そのために情報収集や発信、枠組みに関する提言を日々行っていることについて議論しました。

また、細胞性食品の安全性に関しては、国際機関FAOとWHOの共同組織で、食品安全と国家間の公正な貿易に関する国際規格策定等をおこなうコーデックス委員会や、国内では厚労省主導で進む食品安全委員会の協議状況を紹介しました。

細胞農業研究機構の役割

2023年の現在、日本では当機構に50以上の企業・研究機関・団体に参画いただき、細胞農業サプライチェーンの川上から川下まで、様々な観点で協議が行われています。

本ゼミ受講者へ「フードテック」という枠組みの細胞性食品について、講義前と後の印象変化について伺いました。特別講座の前後でいわゆる”培養肉”に対する認識の変化を見比べます。

【講義前】

講義前では、情報がないため生じる不明瞭なイメージや、漠然とした期待がみられました。

(コメント抜粋、一部要約)

  • 既存の食品の代替品
  • 食べ物そのものを作るだけでなく、調達や調理に先端技術を用いる場合を示している言葉。とても広い範囲を示していてぼんやりしたイメージしかない。
  • 近未来的で、従来の食品と比較して無機質であったり人工的というイメージ。ただ、それはマイナスなイメージというわけではなく、現在の社会課題(環境問題、病原菌等)に対応したものであることを期待される。

【講義後】

3回にわたる講座後には、現在流通する食肉や乳製品に対する見方にも変化があり、細胞性食品を新たな「食材」として認識する一方で、なにが自然でなにが不自然なのか、細胞から直接食肉を生産することによる、意識変容に関する哲学的な意見もみられました。

(コメント抜粋、一部要約)

  • なぜ”培養肉”が生まれたのか、という点が不明瞭であったが、必要性があって生じたのであると知ることが出来た。珍しいから食べたい、という感覚から、知るべきもの・適応すべきものという感覚に変わった。企業や人の労力が見える事で、ぜひ推進する一助となれればと強く思う。
  • 不自然な食品という観念が無くなり、同じ食品として考えられ、食品のひとつのカテゴリーとして認識できるようになった。
  • 安全性についても問題点が理解でき、より安心して食べれるようになった。ただ、環境負荷と経済性の観点から培養肉が現実的にどれくらい必要になるのかよくわからない。普及するかどうか、だいぶ分からなくなった。
  • 日本と他国の差が強く印象に残っています。ゼミに参加するまでは国の差なんて無いと思ってた。知らないことでもやもやしていたことを知ることで解像度が少しずつ上がっていくことが楽しかった。
  • 挑戦自体が反不可逆性をはらんでいる。その時の安全性 BSEやO157はそれが生まれてそうなって初めて認識されたリスク。独立生命から殺して取り出した肉を食するのでなく細胞培養を食することで将来おこる「毒性」は本当にないのかどうか?その疑問は残り続けた。あるいはよく考えることでより強まった。
  • 自然、不自然については「安心できるか否か」であると考えていたが、その点は変わらない。一方でこれまで「安心できる」と考えていた”牛乳”や”豚肉”について改めて考える事で、思考停止して気が付かない違和感を知ることが出来た。飼育環境の面でも、少しずれるが食糧安保の面でも日本は安心できる状態に無いと感じた。
  • 倫理的な問題は、私は人肉も増やして食べたりできるのかな、と思ってしまったので、それとは違っていた。はやくナゲットとか食べたいなと今は思っている。

様々なご意見をいただき、当機構としても貴重な機会をいただきました。

参加いただいた受講生の皆さん、ありがとうございました。