国内における細胞性食品のリスク評価および管理方針にかかる見解書(業界案)の作成

2024年9月1日

業界案の作成の経緯

 一般社団法人日本細胞農業研究機構(JACA)は、国内における細胞性食品のリスク評価および管理方針にかかる見解書(業界案)をとりまとめました。本書作成は、記事「新開発食品における『設計段階からの安全性』確保に向けて」(2023年5月19日)のステップIIIにあたります。

 本案は、2024年5月に公開した『細胞性食肉及び魚介類の安全性及び品質管理にかかる国際動向』(以下、「国際動向レポート」)に基づき、国内法制度や食品・医薬品の安全性評価の考え方を踏まえて構成しました。作成にあたっては、国内の細胞性食品の開発業者、日本企業と連携する海外の細胞性食品の開発事業者、その連携先の日本企業との意見交換を重ねました。また本案の作成は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けております。

作業の進行と工夫

業界案のとりまとめに至るまでのプロセスは以下の通りです:

  • 2024年3月:JACA会員企業との協議を開始
     「国際動向レポート」(※詳しくは過去記事「細胞性食品の国際的な安全性評価・規制動向に関する包括的レポートを公開(2024年5月24日)」)の内容を、日本の法制度や産業実態に基づき評価する過程で、日本としての本食品への安全性の見解整理を行う目的のもと、JACA会員企業との協議をスタートしました。この協議は、「国際動向レポート」の最終化と同時並行で行いました。国際的な議論を、ただ翻訳するのではなく、その内容を国内の産業界の視点から咀嚼・評価し、国内産業の案として整理することを心がけました。
  • 2024年3月~4月:素案作成を担う専門のコンサルティング企業選定に難航
     同時期に、専門的な知見を持つコンサルティング企業への協力依頼を行いましたが、新規分野であるがゆえに「細胞性食品の安全性に関する実績・経験不足」などの理由により、15社中11社から依頼を断られる結果となりました。結果的に3社と連携し、手探り状態から様々な協議を重ね、作業を進めてまいりました。各社の得意分野が異なるため、相談先を一社に絞るのではなく、相互補完的な体制を組みました。
  • 2024年4月:産業界との意見交換の実施
     素案作成の準備として、JACA会員企業とコンサルタントとの間でハザード分類や見解内容の整理方針に関する集中的な意見交換を行いました。

写真:2024年4月12日、4月18日のJACAにおける品質管理委員会の様子

  • 2024年4月~7月:リスク評価・管理に関する見解書(初版)の作成
     国際動向レポートと企業からのフィードバックをもとに、細胞性食品のリスク評価・リスク管理に関する見解書のドラフト(初版)をとりまとめました。
  • 2024年7月4日:初版の回覧開始、7月19日を1次コメント締切に設定
     7月16日には説明会(ドラフトの内容共有と質疑応答)を開催しました。1次締め切り以降も随時コメントを受け付け、最終版は同年9月初旬に完成しました。

今後の展開と透明性の確保

 次のステップ(IV)としては、本「業界案」をレギュラトリーサイエンスの専門家に見せてさらに「たたいてもらう」ことにより、「専門家案」を作成します。詳細は記事「『国内における細胞性食品のリスク評価および管理方針に関する考え方(専門家案)』を発表しました(2025年6月25日)」をご覧ください。この専門家案では、製造販売業者や研究開発者とは独立した立場から、最新の科学的知見に基づき、リスク評価・管理の視点を整理しました。

 リスク評価および管理方見解書

一般社団法人日本細胞農業研究機構(JACA)は、国内における細胞性食品のリスク評価および管理方針にかかる見解書(業界案)をとりまとめました。