【シリーズ2】 細胞性食品は販売されているの?

細胞性食品は販売されているの?

2023年10月時点で細胞性食肉が市販化されている国はシンガポールと米国です。

シンガポール政府は国策として細胞性食肉産業実装へ早くから取り組んでおり、2020年には細胞性チキンナゲットを含む料理が一食約2,000円で販売が開始されています。米国では、2023年6月にアップサイド・フーズ社とイート・ジャスト社のグッド・ミート事業がFDA(食品医薬局)に次いでUSDA(農務省)から許可を取得しました。

研究開発工程の上で、開発中の食材を官能評価する必要が生じたり、商談パートナーや投資家候補のような社外の人間が試食をする必要性が生じることがあります。シンガポールなど、細胞性食品開発を国家戦略として世界に先駆けて取り組み、仕組み化が進んでいる国では、試食実施までの安全性担保の工程が細かくされているのです[1]

null

細胞性ビーフ (イスラエル アレフ・ファームズ社)

 

細胞性チキン(イート・ジャスト社のグッド・ミート)

吉富代表理事が2022年にグッド・ミート社の細胞性チキンナゲットを試食した感想

「塩分控えめのサラダチキンを彷彿とさせる味で、違和感のある風味などもなく、ある意味おいしいもおいしくないもない”普通の”チキンの味でした。味は淡泊で均一な印象。きちんと鶏肉の風味や香りがして、安心したのを覚えています。」

 

気になる日本の動向は?

9年間連続でミシュラン星[2]を獲得した日本料理店「雲鶴」のオーナー料理長 島村さんと再生医療ベンチャー「ティシューバーネット㈱」の大野さんが共同設立したダイバースファーム。細胞性チキンの開発が進んでおり、調理加熱すると「マスク越しでも伝わるような肉のいいにおいがします」とのことで味・風味にも期待が持てます。
【ミライの肉】培養肉ルールなく販売できず…今なぜ必要?

©ダイバースファーム社

2022年3月、東京大学の竹内昌治研究室と日清食品との共同開発プロジェクトの一環で、約1cm角の培養サイコロステーキ肉の開発関係者間で試食が行われました[3]。今後は美味しさの観点から研究開発がより進展することが期待されています。

 

2022年10月、日本ハム社は、培養肉の細胞を培養する際に必要となる「培養液」の主成分を、これまで用いられてきた動物由来の血清から一般的に流通する食品由来のものに置き換えて、ウシやニワトリの細胞を培養することに成功したことを発表しました。これは、培養液コストで大きな割合を占める動物血清を、安価かつ安定的に調達可能な食品に代替できるということです。[4]

ニワトリ細胞から作った培養肉(3.5cm × 2.5cm、厚さ5mm)

2023年2月、インテグリカルチャー社が「細胞性食品でつくるフォアグラ風味のお出汁たっぷりフラン」開発試食会を都内で実施し、共同研究パートナー会社から15名が参加しました。「香りを感じるほどではなかったが、フォアグラのような味はあった」や「コクのある味が感じられた」などの声が聞かれたようです。[5][6]

©インテグリカルチャー社

現在の細胞農業技術には、ステーキ肉をつくるために大量培養した細胞を回収した後の加工工程が必要不可欠となっています。

2023年3月、大阪大学・島津製作所・伊藤ハム米久・凸版印刷・シグマクシスが「培養肉未来創造コンソーシアム」の設立発表があり、3D バイオプリント技術の応用開発と生産・流通までの一貫したバリューチェーンの確立することを発表されました。[7]

日本でも、大手企業が研究機関やスタートアップとタッグを組み、細胞農業技術開発を牽引するニュースが活発化しています。量産技術確立を早め、産業創出を日本からリードするためにも益々の企業参画が期待される中、嬉しいニュースがありました。2023年10月、経済産業省のバイオものづくり革命推進事業(総予算3,000億円)[8]のひとつに、藤森工業(株)・凸版印刷(株)・(株)島津製作所による「細胞性和牛肉の社会実装に係る研究開発」が採択されたのです。累積投資額ベースで他国と最大約100倍の差がつけられている厳しい競争状況で、事業会社にとって国による補助金支援は研究開発促進への大きな力添えです。