【シリーズ4】近年の代替タンパク市場

近年の代替タンパク市場

代替タンパク食材として開発が進められている細胞性食肉とは別に、すでに市場流通している代替タンパク食品のひとつに「プラントベース食品[1]」があります。動物から細胞を採取して増やす、動物由来タンパクの細胞性食肉と異なり、プラントベース食品とは、動物性原材料ではなく、植物由来の原材料を使用した食品のことです。仏教や伝統食の精進料理もいわゆるプラントベースではありますが、近年増加している需要は、宗教に根差した食文化背景とは別にあるようです。

先進国で顕著な生活習慣病予防などの健康志向、環境問題、動物福祉やクーエルティーフリー志向などの社会変容が増加背景の理由[2]にあり、プラントベースの市場規模は2022年には 445億米ドル、2023年には 504億米ドル、年間平均成長率 (CAGR) は13%以上を予測。 今後もこの傾向は続き、CAGR12%以上で、2027年には821億米ドルに達することが推定されています[3]

日本のインバウンド需要は2023年上半期で1071万人[4]を達し、観光庁は数年前より観光客やビジネス旅行者の消費単価を増加させる施策として、飲食事業者のプラントベース需要対応整備を主導してきました[5]

国内プラントベース市場

国内におけるベジタリアン、ビーガン人口は、23年1月時点でベジタリアン率は5.9%、週に1日以上、意識的に動物性食品を減らす食生活を送るフレキシタリアンは19.9%と増加傾向にあります。

参照元:
株式会社フレンバシー, 第4回 日本のベジタリアン・ヴィーガン・フレキシタリアン人口調査, 2023年1月 https://frembassy.jp/news-post/statistics3/

 

細胞性食肉は、代替タンパク市場の次なる一手

細胞性食肉はプラントベース食品とは異なり、動物の細胞を増やしてつくる動物性タンパクの食材です。シリーズ② 細胞性食品は販売されているの? で触れた通り、2023年10月現在、世界で2社が細胞性チキンでの販売承認を、それぞれシンガポールと米国で取得しています。

 

米国アップサイド・フーズ社の細胞性チキンは、FDAに提出された市販前協議申請文書[6]の栄養成分分析によると、全体的な傾向として 従来チキン(皮なし)と高い類似性があり、その他の栄養指標でも伝統的につくられたチキンと大きな違いはないとされています。

 

  • タンパク質・アミノ酸:従来チキン(特に筋成分)と類似性が高い
  • 脂質: 培地組成に伴い大きく変動がみられた。但し、従来チキンは主要脂肪源ではないため、大きな問題ではない
  • ビタミン・ミネラル:従来チキンとわずかな違いがみられた。但し、従来チキン基準値内、または他の一般食品で報告されている範囲内である。

細胞性チキンの図例と従来の鶏むね肉との比較

© Upside Foods
https://www.fda.gov/media/163262/download?attachmentwidth=”80%” max-市場投入初期には、細胞性食肉の希少性価値を最大限活用し、強みである動物性原料の旨み・風味を生かした加工食品として市場開拓する可能性も十分魅力的です。

量産化による価格逓減の追求とは別軸で、低コレステロールの細胞性食肉など、特定保健食品や機能性表示食品のような研究開発の可能性も持ち得ています。

画像:ステークホルダー・フーズ社の3Dバイオプリンターで成型された細胞性ハタ